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東京地方裁判所 昭和51年(特わ)3621号 判決

被告人

本籍

東京都北区西ケ原一丁目四八番地

住居

東京都北区西ケ原一丁目四八番一六号

職業

幼稚園及び珠算学校経営

石川四郎

大正一二年一〇月二五日生

公判出席検察官

清水勇男

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金一、五〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から一年間、右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、東京都北区西ケ原一丁目四八番一六号などにおいて、幼稚園及び珠算学校を経営しているものであるが、自己の所得税を免れようと企て、収入の一部を除外して簿外預金を設定し、架空経費を計上するなどの不正な方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和四八年分の実際総所得金額が六〇、九四〇、八五五円(別紙(一)修正貸借対照表参照)あつたのにかかわらず、昭和四九年二月二七日、東京都北区王子三丁目二二番一五号所在の王子税務署において、同税務署長に対し、昭和四八年分の総所得金額が一四、九五七、二〇一円でこれに対する所得税額が五、三四〇、六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出したまま、昭和四九年三月一五日の法定申告期限を徒過させ、もつて不正の行為により同年分の正規の所得税額三三、六〇八、四〇〇円(別紙(三)税額計算書昭和四八年分参照)と右申告税額との差額二八、二六七、八〇〇円を免れ

第二  昭和四九年分の実際総所得金額が七一、七四六、七一九円(別紙(二)修正貸借対照表参照)あつたのにかかわらず、昭和五〇年三月一四日、前記王子税務署において、同税務署長に対し、昭和四九年分の総所得金額が一六、三六五、五〇二円でこれに対する所得税額が五、一七〇、六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告を提出したまま、昭和五〇年三月一五日の法定申告期限を徒過させ、もつて不正の行為により同年分の正規の所得税額三九、七一二、九〇〇円(別紙(三)税額計算書昭和四九年分参照)と右申告税額との差額三四、五四二、三〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全般について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書及び収税官吏に対する各質問てん末書

一  湊正寛の検察官に対する供述調書

一  押収(昭和五二年押第六二六号)してある次の証拠物

1  収支簿三綴(符一乃至三)

2  所得税確定申告書二葉(符四、五)

勘定科目別増減金額につき

(なお以下の標目末尾のかつこ書内の記載は証拠等関係カードの番号を示す。)

<現金>

1  収税官吏東勝夫作成の昭和五一年九月三〇日付現金調査書(甲〈1〉)

<定期預金>

2  同じく定期預金残高及び受取利息調査書(甲〈4〉)

<その他預金>

3  同じく定期積金及び給付補てん備金調査書(甲〈5〉)

4  収税官吏東勝夫作成の昭和五一年九月二一日付普通預金残高及び受取利息調査書(甲〈6〉)

5  同じく貸付信託、金銭信託調査書(甲〈7〉)

6  同じく昭和五一年一二月一〇日付通知預金残高及び受取利息調査書(甲〈8〉)

<たな卸商品>

7  湊正寛作成の昭和五一年七月一三日付申述書(甲〈9〉)

<貸付金>

8  収税官吏東勝夫作成の昭和五一年九月三〇日付貸付金調査書(甲〈10〉)

<建物構築物>

9  同じく昭和五一年一〇月八日付建物調査書(甲〈11〉)

9の(一)収税官吏神品長市作成の簿外減価償却資産調査書(甲〈30〉)

<ゴルフ会員権>

10  東都観光(株)坪内幸紀作成の昭和五一年四月二六日付回答書(甲〈12〉)

<出資金>

11  石川四郎作成の昭和五一年九月六日付確認書(乙〈9〉)

<事業主貸>

12  収税官吏東勝夫作成の昭和五一年九月三〇日付所得税住民税調査書(甲〈13〉)

13  同じく保険料調査書(甲〈14〉)

14  同じく子供への贈与金調査書(甲〈16〉)

15  同じく海外旅行費用調査書(甲〈17〉)

16  同じく経費中事業主貸調査書(甲〈18〉)

17  同じく専従者給与及親族給料調査書(甲〈19〉)

18  石川泰子の質問てん末書(甲〈15〉)

<過払源泉税>

19  収税官吏東勝夫作成の昭和五一年九月三〇日付過払源泉税調査書(甲〈20〉)

<前渡金>

20  同じく前渡金調査書(甲〈21〉)

<買掛金>

21  同じく買掛金調査書(甲〈22〉)

<借入金>

22  同じく昭和五一年九月四日付借入金調査書(甲〈23〉)

<前受家賃>

23  同じく昭和五一年一〇月三〇日付家賃収入及び前受家賃調査書(甲〈24〉)

<牛乳代預り金>

24  同じく昭和五一年九月三〇日付牛乳代預り金調査書(甲〈25〉)

<源泉税預り金>

25  同じく源泉税預り金調査書(甲〈2〉)

<退職給与引当金、青色専従者給与、青色専従者控除、青色申告控除>

26  王子税務署長作成の昭和五一年一〇月二八日付証明書(甲〈26〉)

<配当所得>

27  巣鴨信用金庫内村進作成の昭和五一年八月一日付証明書(甲〈27〉)

<不動産所得>

前記24、11の各調査書

<給与所得、給与所得控除>

28  昭和四八年分所得税確定申告書(押第六二六号の符四)

<雑所得>

29  篠崎千枝子作成の昭和五一年一〇月七日付申述書(甲〈28〉)

前記8、5の各調査書

<区助成金収入>

30  青色申告者書類綴(押第六二六号の符六)

<利子分離課税分>

前記4、5、6、7、8の各調査書

<事業主借>

前記30の書類綴

<給与収入>

前記30の書類綴

<前払金>

31  収税官吏神品長市作成の昭和五一年九月七日付前払金調査書(甲〈29〉)

<車輌運搬具>

前記9の(一)の調査書

<未払金>

32  収税官吏神品長市作成の昭和五一年九月六日付未払金調査書(甲〈31〉)

<譲渡所得特別控除>

33  収税官吏東勝夫作成の昭和五一年一二月一五日付譲渡所得調査書(甲〈32〉)

(法令の適用)

判示の各所為は、いずれも所得税法二三八条に該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑を併科する。

以上の各罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を主文第一項の刑に処し、罰金刑の換刑処分については同法一八条を、懲役刑の執行猶予については同法二五条一項をそれぞれ適用する。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 中村勲)

別紙(一) 修正貸借対照表

石川四郎 昭和48年12月31日

別紙(二) 修正貸借対照表

石川四郎 昭和49年12月31日

別紙(三) 税額計算書

(昭和48年分)

税額計算書

(昭和49年分)

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